世界自然遺産小笠原諸島管理計画の改定について(お知らせ)
小笠原諸島世界自然遺産地域は、平成22(2010)年に策定、平成30(2018)年に改定された「世界自然遺産小笠原諸島管理計画」に基づいて保全管理が行われてきたところですが、今般、環境省、林野庁、文化庁、東京都及び小笠原村(以下、「管理機関」という。)は、計画改定以降の自然環境や社会状況の変化等を踏まえ、より実効性のある計画とするため、令和6(2024)年5月に「世界自然遺産小笠原諸島管理計画」を改定しました。
計画改定に当たっては、令和5(2023)年11月上旬から12月上旬にかけて同計画の案をもとに広く意見を募集しました。
詳しくは、「意見募集の結果」をご覧ください。
1.概要
管理機関は、平成22(2010)年1月に「世界自然遺産推薦地小笠原諸島管理計画」を策定、平成30(2018)年3月に「世界自然遺産小笠原諸島管理計画」(以下「現行計画」という。)として改定し、これらの計画に基づいて、小笠原諸島世界自然遺産地域の保全管理を行ってきました。最初の計画策定から8年の間に、世界自然遺産登録もはさみ、固有種の保全と生態系の回復に一定の効果が確認された一方で、外来種を排除することにより他の外来種が増加するなど、生態系に想定を超える変化が生じることも明らかになりました。また、特に有人島においては、保全管理が村民の生活や産業に影響を及ぼす例も見られ、遺産価値の保全に当たって、村民の理解や協力を得ることの重要性が明らかとなりました。計画改定後は、各種事業で大きな進展が見られた一方で、外来種の分布拡大や固有種等の個体数減少など新たな課題が顕在化しました。このため、計画改定以降の自然環境や社会状況の変化等を踏まえて現行計画を見直し、小笠原諸島全体における自然環境の保全管理の方針についておおむね10年先を見据えた長期目標とその実現に向けた方策を示した「世界自然遺産小笠原諸島管理計画」を改定しました。
2.管理計画改定に当たって整理された課題
自然環境等の変化に応じた課題の再整理
- 兄島におけるグリーンアノールの分布拡大、母島におけるアジアベッコウマイマイやエリマキコウガイビルの分布拡大、オガサワラカワラヒワの個体数の急激な減少、オガサワラシジミの繁殖途絶など、遺産価値を揺るがす新たな課題が顕在化した。特に侵略的外来種の排除については、技術面で解決困難なものも多い。
- 今後の世界自然遺産の保全管理に当たって、希少種の生息域外保全と併せて、侵略的外来種の防除技術の開発を推進する必要がある。
- 近年、西之島の噴火をはじめとして、小笠原諸島周辺における火山活動が活発化しており、地形・地質や生物多様性の観点からも小笠原諸島の自然環境の価値が高まっていると考えられる。
- 世界自然遺産推薦時に整理した小笠原諸島の地形・地質、生物多様性の価値について、改めて情報を収集・分析し、再評価を行うべきである。
気候変動への対応
- 国内外の各地で異常気象等の気候変動の影響が顕在化しており、世界自然遺産の保全管理においてもより長期的・大局的な視点から取組を実行していくことが求められる。
- 気候変動による生態系への影響を迅速に捉え対策を実施するため、長期的なモニタリングを行う必要がある。
外来種への対策
- 小笠原諸島においては、既に侵入・定着した侵略的外来種が生態系に大きな影響を与えている。
- 侵略的外来種には、一度定着すると現状の技術では排除が困難な種や、技術的には排除が可能なものの、費用や労力の点で排除が追い付かない種もある。このため、未侵入・未定着の侵略的外来種の侵入・拡散を防ぐことが非常に重要である。
- 既に侵入・定着している侵略的外来種については、今後も対策を継続するとともに、より効果的に対策を実行するために、防除技術の開発を推進する必要がある。
リソースの拡充と効果的活用を念頭に置いた方策の検討
- これまで世界自然遺産の保全管理には、多くの費用や労力をかけてきたが、これらのリソースには限りがある。
- 新たな資金確保や体制整備に向けた検討を進めるとともに、より効果的かつ持続的な保全管理を図るため、事業の優先順位を考慮した上で達成目標や取組内容等を再整理する必要がある。
研究者の役割の再整理
- 世界自然遺産登録から10余年が経過したことを踏まえ、改めて研究者の役割を整理する必要がある。
- 研究者に期待される具体的な役割として、科学的見地から保全管理の現状や課題を評価し、遺産地域として目指すべき姿を示すこと、前述の侵略的外来種の防除技術の開発に係る研究を積極的に行うこと、世界自然遺産小笠原諸島の魅力発信を行うことなどが考えられる。
地域参画の推進に向けた体制・仕組みの検討
- 管理計画第2期に向けた計画改定の検討や改定後の計画の実行を通して、世界自然遺産の保全管理への地域参画、また地域連絡会議や科学委員会との連携も進みつつある。
- 世界自然遺産登録から10年以上が経過した今、今後は自然環境や世界自然遺産の価値を理解し、保全のための取組や配慮を行うだけでなく、世界自然遺産であることを活用した地域の発展、地域づくりについても検討を進める必要がある。
管理計画、アクションプラン※の構成の再整理
- 管理計画において、長期目標とその目標に基づく管理の方策の関係性、さらには管理計画とアクションプランとの関係性もわかりにくい部分がある。
- 管理計画で示す管理の基本理念、基本方針、管理の方策、アクションプランで示す達成目標、取組内容等の関係性がより明確になるように、両計画の構成を再整理する必要がある。
※短期的な目標及び対策の内容や実施機関を示しており、おおむね5年間隔で見直す、管理計画を補完する具体の行動計画
3.添付資料
- 世界自然遺産小笠原諸島管理計画(2024年5月版)
- 参考 【新旧比較】世界自然遺産小笠原諸島管理計画 目次構成・各項目の改定状況
- 参考 世界自然遺産小笠原諸島管理計画アクションプラン【第4期】(2024年5月版)
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